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世界の航空大手がインド争奪 米中対立の回避地、製造業シフト追い風

インドの航空市場は中国などに代わる成長市場として関心が高まる(インディゴの航空機)

世界の航空大手がインド市場の取り込みに動いている。現地勢が航空機を大量発注し、全日本空輸(ANA)などは提携や再編を急ぐ。市場規模が世界3位のインドは年平均7%の高成長が見込まれる。トランプ米政権による関税を避けるため、中国から製造業がシフトしていることも追い風になっている。

「インドは世界の航空産業の中心にある」。首都ニューデリーで開かれている国際航空運送協会(IATA)の年次総会。同国の航空最大手、インディゴのピーター・エルベルス最高経営責任者(CEO)は講演や会見でこう繰り返した。

1日には英ヴァージン・アトランティック航空、米デルタ航空などとの提携をそれぞれ発表し、パートナーシップを結ぶ国外の航空会社は計10社となった。各社はインディゴを通じ、インドを基点にした共同運航や乗り継ぎ便の拡大を狙う。

航空大手がインドに熱視線を注ぐ背景には、経済の堅調さがある。

政府が5月30日に発表した2024年度の実質GDP(国内総生産)は前年度比6.5%増加した。旺盛な消費や投資が経済の押し上げにつながっており、28年には日本やドイツを抜いて世界3位の経済大国になるとの見方もある。

米関税政策も追い風に

トランプ米政権の関税政策による景気減速が懸念されるなか、インドは航空需要が旺盛だ。

IATAが2日に発表した25年の世界旅客数見通しは前年比4%増の49億8800万人。24年末時点は52億人と初の50億人超えを掲げたが、2日の発表では下方修正した。

ウィリー・ウォルシュ事務総長は「世界の製造業に減速感が強まっている」と指摘した。北米の旅客需要は前年比0.4%にとどまるが、その中でもインドを含めたアジア・太平洋地区は9%増える。

提携戦略を語るインディゴのエルベルスCEO(1日、ニューデリー)

さらに追い風も吹く。アップルはトランプ米政権の対中追加関税を避けるため、中国からインドに組み立てをシフトしている。

モディ政権は製造業による産業立国を掲げており、IT人材も豊富にいる。関税政策により製造業が拠点シフトを加速させ、インドが世界の輸出拠点としての存在感が高まれば、さらに航空需要が膨らむ。

航空各社は有望なインド市場の取り込みに動く。国内ではインディゴと、同国航空2位のエア・インディアが23〜24年にそれぞれ500機以上の航空機を発注している。

欧州エアバスがまとめた23年の国別旅客数はインドが1億7100万人で、中国(7億人)と米国(6億9900万人)に次ぐ世界3位。43年には4倍の7億人に増え、現在の中米と同じ規模に並ぶと予測する。

23年末でインドの航空会社が運航する機材数(日本政策投資銀行調べ)は559機に対し、旅客数が7億人いる中国は約3800機。インドでは今後さらに数千機もの巨大な新造機需要が生まれる。米ボーイングやエアバスも拠点整備を進めている。

ANAはエア・インディアと共同運行

航空路線を増やすために、再編や提携も相次ぐ。インド財閥大手タタ・グループは22年に国営だったエア・インディアを買収した。24年には同社がシンガポール航空傘下だった3位のビスタラも吸収合併した。

シンガポール航空はこの統合会社に25.1%を出資し、24年11月から両社の共同運航便を増やした。ゴー・チュン・ポンCEOは「最も成長率の高い巨大な潜在市場から世界へ直接打って出る機会を得た」と語る。

エア・インディアの機体

日本勢も手を打つ。ANAは24年5月からエア・インディアとの共同運航を始め、25年3月には対象便を増やした。

今後はシンガポール航空とダイヤや運賃を調整して収益も分け合う「共同事業」の対象をインド便にも広げる。日本航空(JAL)もインディゴとの共同運航を24年12月に始めた。

インド中心とした「インド亜大陸」市場の年平均成長率(19〜43年)は7.4%に上るとみられている。伸び率は世界で最も大きい。米中経済の先行きが不透明ななか、インドでの空の戦いの行方が、航空業界に大きな影響を与える。

まとめ1:

この記事によると、インド航空市場は世界中の大手航空会社から注目を集めています。背景には、第一に、インド経済の好調です。第二に、新たな製造拠点としてのインドは航空需要が膨らみます。今後、インドの国別旅客数は今の4倍になると予測されましたので、航空機需要の増加と繋がります。

キーエンスの中田有社長は人材育成に力を入れる方針を示す

キーエンスの2025年3月末の連結従業員数が21年同期以来、4年ぶりに前年同月末から減ったことが分かった。ここ数年、海外中心に新規採用を増やしていた。既存社員の育成や人件費上昇を意識しての方針転換とみられ、販管費率の改善につながる可能性がある。

25年3月末の同従業員数は1万2261人と前年(1万2286人)から微減だった。6月13日に予定する株主総会の招集通知で分かった。新型コロナウイルス禍の21年3月末に人員が減った後は採用を加速し、24年3月末には1万2286人と3年間で47%増えていた。

採用は海外の営業担当者を中心に増やしたとみられる。海外では現地で採用し、日本と同じように製造現場などに向けてカメラやセンサーなどの商品を販売している。25年3月期の海外売上高比率は足元で65%となり、10年前から15ポイントほど高まった。

一方で人件費も膨らんでいた。売上高に占める販管費の比率は24年3月期に31.8%と22年3月期比で約5ポイント上昇し、営業利益率は51.1%と同約4ポイント悪化した。市場では「採用のペースが早すぎたのでは」(国内証券アナリスト)との声がある。

キーエンスの中田有社長は4月の決算会見で「最近は人数を増やしていたが、足元では育成に力を注ぐ」と説明した。従業員1人当たりの営業利益額は25年3月期に前の期比11%増の約4483万円だった。あるアナリストからは新規採用後の利益貢献は1〜2年ほどとの声があり、今後は利益を回収できるかどうかも注目される。

もちろん、景況感悪化や新規事業への投資増などが収益を圧迫する可能性はある。海外事業は国内と比べて利益率が低いとみられる上、せっかく育成しても、離職率が高いとされる海外人材が流出するリスクがある。

ゴールドマン・サックス証券の諌山裕一郎アナリストは「現状の開発体制や費用体制が続く想定のもと、キーエンスの営業利益率は53%に戻るだろう。景況感が回復すれば過去最高水準(55%)に戻る可能性もある」と指摘した。岡三証券の諸田利春シニアアナリストも「今後も50%台の営業利益率を維持していくだろう」と話した。

まとめ2:

この記事によると、キーエンスの従業員数は4年ぶりに微減したことが判明します。また、キーエンスは従来の海外を中心に採用することから、既存社員の育成へ方針を転換しました。背景には、人件費上昇や販管費率の膨らむことで、営業利益率の改善を目指されます。従業員が人当たりの利益は増加した一方、海外の低利益や人材流出リスクもあります。今後、現状を維持すれば、営業利益率が回復できると語されます。