0609  トヨタの再編

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📰【記事の要約】

◆ 背景:トヨタグループの「御三家」の再編

  • トヨタ自動車グループ内で、デンソー・アイシン・豊田自動織機は「御三家」と呼ばれていた。
  • 今回、その一角である**豊田自動織機(フォークリフト世界一の企業)がトヨタ不動産と豊田章男会長によって非公開化(株式買収)**される。
  • これまで続いた「系列(ケイレツ)」中心の関係から、脱却の動き。

◆ 変化の背景

  • 車の電動化・知能化が進行し、自動車業界の構造が大きく変化中。
  • ガソリン車と比べて**EVの部品点数は半分以下(約1万5000点)**であり、異業種からの参入も容易。
  • これにより、旧来のケイレツ構造がリスク要因と化しつつある。

◆ 豊田織機の課題

  • フォークリフト分野では世界トップだが、資本効率が悪く、株価評価(PBR)も低迷。
  • グループ株式を大量に保有していたため、もし外部投資家が買収した場合、トヨタグループ全体の支配構造が揺らぐ懸念があった。

◆ 非公開化の狙い

  • トヨタグループ内に留め置くための防衛策
  • 長期的・戦略的な変革(物流、AI活用など)を株式市場の短期的圧力から解放して推進する。

◆ 他の動き

  • ダンボール製造の中央紙器工業も上場廃止。
  • トヨタ株式の持ち合いを解消しつつ、必要な企業には関与を継続。
  • 関係者:「いつまでもグループにはいられない」という声も。

🎯【トヨタの狙いと戦略的意図】

狙い内容
① 電動化対応のためのスピード経営EV化、知能化への対応を、株主の目を気にせず迅速・自由に行える環境を整備したい。非公開化により短期利益からの圧力を排除。
② ケイレツ依存からの脱却従来のピラミッド型の系列構造を見直し、より柔軟でオープンなサプライチェーンへの移行を進めている。
③ グループ支配権の防衛外部投資家に豊田織機の株式を取られ、グループ経営の主導権が揺らぐのを回避するため。
④ データ・AIを活用した新たな収益源の創出単なる部品供給ではなく、物流・AI・ソフトウェア分野への移行・育成を目指している。
⑤ グループ再編による筋肉質な経営不採算部門や依存度の高い企業を選別・整理し、グループ全体の資本効率を高める狙い。

🧠まとめ:何が起きているか一言で

トヨタは「家族経営型の村社会」から、「専門性を持つプロ集団」へと脱皮しようとしている。
そのために、御三家ですら聖域化せず、必要とあらば大胆に非公開化・再編を断行しているのです。


「トヨタ御三家(ごさんけ)の織機(しょっき)」も市場退出 

電動化が促す大型再編

フォークリフトからエンジン部品、シート、ベアリングなどケイレツは多岐(たき)に及(およ)ぶ トヨタ自動車グループでデンソー、アイシンと並ぶ「御三家」とされる豊田自動織機。

トヨタ不動産や豊田章男(とよだあきお)トヨタ会長による買収は驚きをもって受け止められた。

専門性のある企業集団としてのグループを目指すトヨタだが、車の電動化や知能化など業界環境は激変している。競争力の源泉だった「ケイレツ(系列」」にも変化の波が押し寄せる。

「織機を非公開化する」。

グループ企業が集積する愛知県刈谷市(かりやし)に1月、トヨタの前副社長でトヨタ不動産の取締役を務める近健太氏の姿があった。主要グループ会社を回り、豊田織機を非公開化する意向を伝えた瞬間だった。

かねて投資家から批判されてきた持ち合い株の解消にとどまらず、豊田織機の買収を通じて非公開化するスキームだ。あるグループ幹部は「そこまで大胆(だいたん)なことができるのか」と驚きを隠さない。

「独自の専門性を持つ企業集団」

トヨタの主要なグループ会社は1次部品メーカー(ティア1)や商用車メーカーの日野自動車など17社に上る。さらにその企業に納入(のうにゅう供货)する部品メーカーが連な(つらな 层层相连 成行成排)っており、完成車メーカーを頂点とする「ケイレツ」と呼ばれるサプライチェーン(供給網)が形作(かたちずく)られてきた。

「(トヨタグループは)それぞれが専門性を発揮(はっき)して自動車産業の発展に寄与する企業集団であることが重要」。トヨタの佐藤恒治社長は2024年、ダイハツ工業の認証不正(にんしょうふせい)に際してこう発言した。ケイレツは徹底した生産効率の向上やコスト管理により、トヨタを世界一の車メーカーに押し上げる原動力となった。

豊田自動織機はフォークリフトで世界首位だが、資本効率の悪さが指摘され続けていた 豊田織機の主力事業はフォークリフトや物流事業で、フォークリフトの世界シェアは1位という。ただ、資本政策では後手(ごて落后)に回り、非公開化が表面化するまでPBR(株価純資産倍率)は1倍を下回っていた。トヨタを含むグループ株式を多く持つことから、仮に豊田織機を買収する別の投資家がいれば、グループ全体に大きな影響力を持つ懸念もあった。

豊田織機の伊藤浩一社長は非公開化で「(物流など)モノの移動を中心とする領域でトヨタグループ変革のけん引役を担っていく」と強調する。

データや人工知能(AI)などグループの知見も生(い)かし、長期目線での取り組みを加速するという。

トヨタを生(う)んだ歴史的な経緯などから「御三家」と呼ばれる豊田織機ですら、トヨタ不動産と豊田氏の2者を株主とする非公開企業に変わる。

トヨタの山本正裕経理本部長はさらなる再編の可能性について「各社状況は異なるので一社一社丁寧に会話を続ける」と述べるにとどめるが、これまでのグループ統治(とうち)の常識が通用しなくなったのは確かだ。

トヨタ向け売上高が7割

トヨタグループを見渡すと、売上高を主要顧客のトヨタに依存する会社が多い。自動車シートを手掛けるトヨタ紡織(ぼうしょく)やトランスミッション(変速機)を手掛けるアイシンは約7割に上る。

電動化対応などで優等生とされるデンソーも50%を上回る。トヨタ向け売上高比率の高まりはハイブリッド車(HV)などでトヨタ車の販売が好調なことも背景にあるが、1社依存がリスクであることには変わりない。

電気自動車(EV)では部品点数がガソリン車の半分の1万5000点程度とされ、ソフトウエアなど異業種の参入も招き(まねき)やすい。

ケイレツ中心のサプライチェーンから業種を超えた水平(すいへい)分業が活発化するとされる。

「いつまでもグループにいられない」

豊田織機がTOB(株式公開買い付け)を受け入れると表明した3日、トヨタのグループ会社で段ボール製造を手掛ける中央紙器工業も32年の上場に幕(まく)を閉(と)じた。物流会社のニッコンホールディングス(HD)が中央紙器に対するTOBを完了した。

同社はトヨタが株式の約24%を保有する筆頭(ひっとう)株主(かぶぬし)だったが、議決権(ぎけつけん)ベースで5%まで持ち株比率を下げた。(誰か) 「上場継続の必要性と、トヨタが保有する中央紙器の株式の取り扱い(对待 处理)を検討したい」。発端(ほったん)はトヨタからの要請だった。同社は上場廃止後も「従来どおり独立性を維持しつつ、(トヨタには)継続してグループに関与(かんよ干预 参与)してもらう」との認識を示す。

豊田織機がトヨタ陣営に買収されるのと対照的だが、部品会社関係者は「いつまでもグループ会社にいられるわけではない」と打ち明ける。

「大再編成が起こりつつある。グループの結束(けっそく)を強化し、今まで以上の努力を」。1998年に豊田章男・トヨタ会長の父にあたり、当時のトヨタ会長だった豊田章一郎氏は決算役員会でこう呼びかけたという。「世紀の再編」と呼ばれた独ダイムラー・ベンツと米クライスラーの合併があった年だ。

それから27年。自動車業界は「100年に1度の大変革期」と呼ばれ、電動化や知能化が新たな競争力の軸になりつつある。協議は打ち切(截止 结束)られたものの、ホンダと日産自動車が経営統合に動くなど再び大規模な再編が取り沙汰(とりざた 评论讨论)され始めた。

豊田織機は26年で創業100年を迎える。電動化に対応できなければ生き残れず、投資家の要望にも応える必要がある。豊田織機の非公開化は、ケイレツのあり方が変化を迫られていることを映す。